幼児教室を開きたいと考えたとき、真っ先に気になるのが「どれくらいの資金が必要なのか」という点です。
開業方法によって必要な費用は大きく異なり、情報を集めるほど混乱することもあります。
フランチャイズの広告を見ると高額な初期費用が目に入り、不安になる方もいるかもしれません。
この記事では、幼児教室を始めるために必要な開業資金の目安や費用の内訳について解説します。
全体像を把握し、自分に合った方法を検討する際の参考にしてください。
幼児教室の開業資金は50万円〜300万円が目安
幼児教室の開業資金は、選ぶ方法によって50万円程度から300万円以上まで大きな幅があります。
なぜこれほど差があるのかというと、開業の方法によって必要な費用の構成がまったく異なるからです。大きく分けると「完全独立」「フランチャイズ加盟」「協会・団体のサポートを受ける」の3つの方法があり、それぞれ初期費用の目安は以下のようになります。
完全独立で開業する場合は、教材や備品の購入費用が中心になります。研修費用や加盟金がかからないため、数十万円程度から始めることも可能です。ただし、カリキュラムの開発や集客をすべて自分で行う必要があり、時間と労力がかかります。
フランチャイズに加盟する場合は、加盟金や保証金、研修費用などで100万円から300万円程度かかるのが一般的です。知名度のあるブランドを使えるメリットがある一方で、初期投資は大きくなります。
協会や団体のサポートを受けて開業する場合は、50万円から100万円程度が目安です。たとえば、一般社団法人日本右脳記憶教育協会(JUNKK)では、研修費用と登録料を合わせて429,000円から開業できます。
なお、どの方法を選んでも、上記の費用とは別に教室の備品や広告費などがかかります。物件を借りる場合は、敷金・礼金・仲介手数料なども必要です。
このように、幼児教室の開業資金は方法によって50万円程度から300万円以上まで幅があります。まずは自分がどの方法で開業したいのかを考えることが、必要な資金を把握する第一歩です。
具体的にどんな費用がかかるのか、内訳を詳しく見ていきましょう。
幼児教室の開業に必要な費用の内訳
幼児教室の開業にかかる費用は、大きく「初期費用」と「月額費用」の2つに分けられます。
それぞれの内訳を把握しておくことで、開業前にどれくらいの資金を用意すればよいか、開業後にどれくらいの固定費がかかるかを具体的にイメージできます。
初期費用
開業時に一度だけ発生する費用です。主な項目を挙げていきます。
まず、研修・資格取得費用があります。協会やフランチャイズに加盟する場合、教育メソッドを学ぶための研修費用が必要です。これには数万円から数十万円かかることが多く、フランチャイズの場合は加盟金として100万円以上になることもあります。完全独立の場合はこの費用はかかりませんが、独自にカリキュラムを構築する手間が発生します。
次に、教材費です。レッスンで使用するカード、教具、テキストなどの購入費用です。扱う教育メソッドによって必要な教材は異なりますが、数万円から十数万円程度を見込んでおくとよいでしょう。協会に加盟する場合は、教材が研修費用に含まれていたり、会員価格で購入できたりすることもあります。
備品・設備費も必要です。机、椅子、棚、マット、ホワイトボードなど、教室運営に必要な備品を揃えます。自宅の一室を使う場合と、テナントを借りて一から揃える場合では、必要な金額が大きく変わります。最低限の備品であれば10万円程度、しっかり揃えるなら30万円以上かかることもあります。
広告・販促費も忘れてはいけません。チラシの作成・印刷、ポスティング、Webサイトの制作などにかかる費用です。開業時に認知を広げるための投資として、5万円から20万円程度は見込んでおきましょう。
テナントを借りる場合は、物件取得費用がかかります。敷金・礼金・仲介手数料で家賃の3〜6ヶ月分程度が必要になるのが一般的です。家賃10万円の物件であれば、30万円から60万円程度の初期費用がかかる計算です。自宅で開業する場合は、この費用は不要になります。
月額費用
開業後、継続的に発生する費用です。
会費またはロイヤリティがあります。協会に加盟している場合は月会費、フランチャイズの場合はロイヤリティが毎月かかります。協会の月会費は1万円から3万円程度が相場です。フランチャイズのロイヤリティは売上の5〜15%程度が一般的で、売上が増えるほど負担も増える仕組みになっています。
テナントを借りている場合は、家賃が毎月発生します。立地や広さによって大きく異なりますが、小規模な教室であれば月5万円から15万円程度が目安です。
その他、消耗品や教材の追加購入費用、光熱費なども継続的にかかります。
開業にかかる費用は「初期費用」と「月額費用」の両方を把握しておくことが大切です。初期費用だけを見て判断すると、開業後の資金繰りで苦労することもあります。
次に、開業方法ごとの費用の違いを具体的に比較してみましょう。
開業方法による費用の違い
開業方法によって、初期費用・月額費用ともに大きな差があります。
ここでは「完全独立」「フランチャイズ」「協会サポート型」の3つの方法について、費用面を比較していきます。自分の予算や状況に合った方法を選ぶ参考にしてください。
完全独立の場合
自分ひとりでゼロから教室を立ち上げる方法です。研修費用や加盟金がかからないため、初期費用を最も抑えられる可能性があります。
必要なのは、教材費、備品費、広告費など実費のみです。自宅で開業し、最低限の備品で始めるのであれば、30万円から50万円程度で開業することも不可能ではありません。
ただし、この方法にはデメリットもあります。教育メソッドやカリキュラムを自分で構築する必要があり、時間と労力がかかります。また、開業後のサポートがないため、集客や教室運営で困ったときに相談できる先がありません。すでに教育経験やノウハウを持っている方に向いている方法といえます。
月額費用は、テナントを借りなければ大きな固定費は発生しません。ロイヤリティや会費もないため、収入のほとんどを自分の取り分にできます。
フランチャイズの場合
大手幼児教室のフランチャイズに加盟して開業する方法です。ブランド力や確立されたカリキュラム、集客支援などを活用できます。
初期費用は、加盟金・保証金・研修費用などを合わせて100万円から300万円程度かかるのが一般的です。有名ブランドになるほど加盟金が高くなる傾向があります。
月額費用としては、売上の5〜15%程度のロイヤリティが発生するケースが多いです。たとえば月の売上が50万円であれば、2.5万円から7.5万円がロイヤリティとして差し引かれます。売上が伸びれば負担額も増えるため、収益性を圧迫する要因になることもあります。
メリットは、未経験でも開業しやすい点と、ブランドの知名度を活かせる点です。一方で、初期費用・ランニングコストともに高く、本部のマニュアルに沿った運営が求められるため自由度は低くなります。
協会サポート型の場合
特定の教育メソッドを持つ協会や団体のサポートを受けて開業する方法です。フランチャイズと完全独立の中間的な位置づけといえます。
たとえば、一般社団法人日本右脳記憶教育協会(JUNKK)の場合、初期費用は以下の通りです。
- 協会認定マスター講師資格講座:231,000円
- 教室開校講座:165,000円
- 認定教室登録料:33,000円
- 合計:429,000円
これに備品・広告費などを加えると、開業資金の総額は約55万円から75万円程度が目安になります。開校支援パッケージ(165,000円)を利用する場合は、約72万円から92万円程度です。
月額費用は、スクール会員月会費の22,000円のみです。売上連動のロイヤリティは一切ありません。月会費は固定なので、売上が増えても負担額は変わらず、努力した分だけ収益になる仕組みです。
費用比較表
| 項目 | 完全独立 | フランチャイズ | 協会サポート型(JUNKK) |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 30万円〜50万円程度 | 100万円〜300万円 | 429,000円〜 |
| 月額費用 | なし | 売上の5〜15% | 22,000円(固定) |
| サポート | なし | あり | あり |
| 自由度 | 高い | 低い | 高い |
このように、開業方法によって費用は大きく異なります。初期費用だけでなく、月額費用や自由度も含めて総合的に判断することが大切です。
次に、資金を抑えて開業するためのポイントを紹介します。
開業資金を抑えるポイント
開業資金を抑えるには、場所選びと開業方法の選択が大きなカギになります。
限られた予算で幼児教室を始めたい場合、いくつかの工夫をすることで初期費用を大幅に削減できます。具体的なポイントを見ていきましょう。
自宅で開業する
最も効果的なのが、自宅の一室を教室として活用する方法です。テナントを借りる場合にかかる敷金・礼金・仲介手数料、毎月の家賃がすべて不要になります。
家賃月10万円のテナントを借りる場合、初期費用だけで30万円から60万円、年間の家賃で120万円かかります。自宅開業であれば、この費用をまるごと抑えられるため、資金面でのハードルが大きく下がります。
ただし、自宅開業にはデメリットもあります。生活空間と教室の切り分けが難しい、住所を公開することへの抵抗感がある、駐車場や立地の問題などが挙げられます。また、マンションの場合は管理規約で教室運営が禁止されていることもあるため、事前に確認が必要です。
既存施設に導入する
すでにダンス教室、学習塾、英語教室などを運営している方であれば、新たな物件を用意する必要はありません。既存の施設に右脳教育などのコースを追加する形で、幼児教室を始めることができます。
この方法であれば、物件取得費用がゼロで、備品も既存のものを活用できます。新たなメニューを加えることで、既存の生徒への付加価値提供や、新規顧客の獲得にもつながります。
日本右脳記憶教育協会の加盟教室にも、ダンススクールや英会話教室が右脳教育を導入しているケースがあります。
ロイヤリティなしの協会を選ぶ
フランチャイズのロイヤリティは、売上に連動するため、長期的に見ると大きな負担になります。月の売上が30万円でロイヤリティ10%であれば、毎月3万円。年間では36万円が差し引かれる計算です。
一方、日本右脳記憶教育協会のように月会費が固定の協会であれば、売上がいくらになってもランニングコストは変わりません。年間の会費は264,000円で固定されるため、売上が伸びるほど手元に残る割合が増えます。
開業方法を選ぶ際は、初期費用だけでなく、この月額費用の仕組みにも注目することが大切です。
開業資金を抑えるには、場所選びと開業方法の選択がポイントになるので、自宅開業や既存施設への導入、ロイヤリティなしの協会を選ぶことで、初期費用・ランニングコストともに大幅に削減できます。
開業資金だけでなく、開業後のランニングコストについても把握しておきましょう。
開業後のランニングコストも把握しておく
開業資金だけでなく、継続的にかかるランニングコストも事前に計算しておく必要があります。
開業時の初期費用ばかりに目が行きがちですが、教室運営には毎月の固定費がかかります。また、開業してすぐに収益が安定するわけではないため、しばらくの間の運転資金も考慮しておくことが重要です。
毎月かかる主な費用としては、まず月会費またはロイヤリティがあります。協会に加盟している場合は月会費、フランチャイズの場合はロイヤリティが発生します。前述の通り、JUNKKであれば月会費22,000円の固定、フランチャイズであれば売上の5〜15%が目安です。
テナントを借りている場合は、毎月の家賃が発生します。小規模な教室でも月5万円から15万円程度はかかることが多いです。自宅開業であれば、この費用は不要になります。
広告・集客費用も継続的に必要です。開業時だけでなく、生徒を増やすためにはチラシ作成やSNS広告などに定期的に投資することが求められます。月に5,000円から2万円程度を広告費として見込んでおくとよいでしょう。
教材の追加購入や消耗品の補充も、レッスンを続けていく上で必要になります。
そして忘れてはいけないのが、収益化までの運転資金です。幼児教室は開業してすぐに生徒が集まるわけではありません。地域での認知を広げ、体験会を重ね、口コミが広がるまでには時間がかかります。生徒数が安定するまで、数ヶ月から1年程度かかることも珍しくありません。
その間も家賃や会費などの固定費は発生し続けます。開業時には、初期費用に加えて、少なくとも半年分程度の固定費を運転資金として確保しておくことをおすすめします。
開業資金だけでなく、毎月かかるランニングコストと、収益化までの運転資金も合わせて計画しておくことが、安定した教室運営への第一歩です。

